シャボン玉も水の上に浮かぶ油膜もレンズの反射防止膜もみんな薄い透明な膜からできているので、色の出現するメカニズム(機序)は、水に浮いた油膜の場合と全く同じです。しかし、同じメカニズムで生じた色でありながら、シャボン玉の色は、油膜の色やカメラレンズ表面の色とは随分違います。シャボン玉は光が強く、かつ、鮮やかな色を呈しています。
このような光の強さや色の差を生む原因はどこにあるのでしょうか?
最も大きな要因は、薄膜と薄膜を囲んでいる媒質の屈折率の相互関係にあります。
☆シャボン玉 ・・・・ 空気<水>空気 (n1=1.0 < n2=1.33 > n3 =1.0)
☆油膜 ・・・・・・・・・・ 空気<油>水 (n1=1.0 < n2=1.42 > n3 =1.33)
☆レンズ ・・・・・・・・ 空気<MgF2<ガラス(n1=1.0 < n2=1.38 < n3 =1.51)
*レンズについてはレンズのコーティングで詳しく述べています。
シャボン玉と油膜の両者は、前後の媒質の屈折率が膜材の屈折率より低いので、光の反射を増加させる組み合わせ(反射増加膜)になっています。すなわち、屈折率の低い媒質と高い媒質が接した場合は、光が低い方から来たときは境界での反射率は小さく、高い方から来たときは反射率は大きくなるからです。そして、境界における屈折率の差が大きいほど光の反射量が大きくなるのです。
シャボン玉と油膜の色を比べると、シャボン玉の方が光が強く鮮やかです。これは膜の屈折率と膜の後ろにある媒質の屈折率の差の大きさによるものなのです。シャボン玉の場合は水と空気でその差は0.33(反射率7.7%)、油膜の場合は油と水で屈折率差は僅かに 0.09 (R=4.2%)、が示す通り、シャボン玉は油膜に比べて裏に突き抜ける光が少なく反射する光が多いからなのです。
この反射光が多いことがシャボン玉をキレイにみせる要因の一つになっています。また、裏に抜ける光が少なことはバックグラウンドが暗くなりコントラストがつくので、キレイに見せる手助けをしています。
次のキレイな要因は、シャボン玉の膜が大変薄いということです。石鹸液の膜はすぐに薄くなります。膜が薄いと、高次の波長光が入り込む余裕がなくなるので、複数の色が混ざることが殆どないからです。殊に黄系(黄・橙)が入り込むと青系との混色である茶系の色が出て全体を汚れた色にしてしまいます。粘性の高い油の厚い膜の場合がこれです。
3番目の要因は、上記の汚れの元になる黄系の波長域または波長幅が非常に狭いことです。したがって、シャボン玉は膜が薄いことと、黄の波長幅が非常に狭く瞬間的にしか現れないことによって、汚れた色が出にくいのです。一方、黄系や緑に比べて、赤と紫の波長幅(赤紫を両者に加えるとさらに広がります)が圧倒的に広く、青(青緑を加える)がそれに続いて非常に広い幅を持っています。シャボン玉がいつも赤紫をベ−スに、赤・青・緑に光っている背景には、このような条件があったのです。
さらに、色覚感情面から見ても、視野の中にいろいろな色彩が混在している絵、写真、風景などを見るとき、そこに純白に近い白が入っていると、他の色も引き立つと同時に全体が引き締まって見えます。特に純度の高い色を楽しむシャボン玉やパステル画では、純白の効果が大きいよう に感じます。白または黒のない画面は、瞬間的にいくらキレイと感じたものでも直ぐに飽きることが多いものです。
晴れた日の庭先で、優しい風に浮遊するシャボン玉の色は、純白に輝いた光(普通の反射)と共に、干渉色では最高の純度と言われる、大変キレイな輝きのある緑・青・紫・赤が、赤〜紫〜青を地色として、適当な暗さと補色を背景に、浮き上がって見えるのです。そして刻々と変わる膜の厚さに相応して、次々と色の絡みの変化を繰り広げてくれるので、一層美しく感じます。
参考
★シャボン玉の組成
1、割れにくいシャボン玉の組成(一般的)
洗剤 1
水 1
グリセリン 5
2、ジャンボシャボン玉の組成(杉山兄弟=シャボン玉の達人)
液体石鹸 250cc
粉ゼラチン 5g (湯を沸騰させないこと)
ハチミツ 10cc
ラム酒 少々
水 1000cc
*特大のシャボン玉を作るには針金に毛糸を巻き付けて大きな輪を作り、それに柄を付ける。