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9.ITと光ファイバーのはなし
IT(情報に関する技術と手段)時代も成熟期に向かいつつあり、1995年にインターネットに参入してから、パーソナルコンピュータの普及と共に、ハードもソフトも目覚ましい進化を続けています。
ITの花形であり、マルチメディアの一つでもある、パーソナルコンピュータ(PC)による電子メール(イーメール/E-mail)やインターネットが世界のどこでもスムーズにできるのは、レーザーと光ファイバーのお蔭なのです。
情報の発信のときは、最初は電気信号で打ち出しますが、これをレーザーの光信号に変換して光ファイバーに送り込みます。情報を受けるときは、レーザーで来た光信号を電気信号に変換して情報を受け取ります。
電話は、大容量データの搬送に合わせて、アナログからデジタルの ISDN に進み、今はブロードバンドに進みつつありますが、最終的には光ファイバーに行き着くでしょう。
マルチメディアの理想(目指すところ)は、「ワンラインマルチメディア」すなわち、1本の線で電話、ラジオ、テレビ、手紙、インターネットなどができる状態になることでしょう。
電話・ファックスとインターネットは電話線、ラジオは電線やアンテナ、テレビはテレビアンテナ、手紙は郵便局です。テレビのディスプレイも普通の放送用はアナログの NTSC 方式ですが、ハイビジョンは独自の方式です。また、パソコン用はデジタルのRGB方式です。このように、テレビのディスプレイを例にとっても、まだバラバラの状態が続いています。ユーザーとしては、一つのテレビで済むようになって欲しいと願っています。しかし残念ながら、ユーザーの願うマルチメディアには程遠いのが日本の現状のようです。
日本は、必要なIT関係の技術は十分に持ち合わせているのになぜできないのでしょうか。国家規模によるIT時代に相応しい「基盤整備」の政策の遅れに大きな原因があるのではないかと思います。行政においても、IT時代に見合った対応ができていません。IT基盤の中枢である放送と通信に関しては、同じ郵政省の管轄にもかかわらず、放送と通信が1本化された行政ができていないようです。
景気を刺激する上でも、日本が世界で一番早く開発し商品化している、ハイビジョンを含めたIT全体の、いわゆるマルチメディアの基盤整備の方向に予算注入したらどうかなと、素人の考えが浮かびます。
光通信ケ−ブルはレーザーと共にITの基底を担っています。光通信ケ−ブルは光ファイバ−と呼ばれる非常に細いガラス繊維を束にしたもので、日本の光ファイバー製作技術は世界に誇れるものです。
(*1979年には電々公社(NTTの前身)が極低損失光ファイバーの開発に成功しています。製作法も人工ルビー等のときに似た「軸付け法」で、安く大量生産に向いています)
IT時代をここまで発展させた最大の要因の一つがこの光ファイバーです。なぜならば、光と光ファイバーは電気と電線(同軸ケーブル)にくらべて減衰やロスがほとんどないこと、ノイズを拾わないこと、桁が幾つも違うほどの大容量のデータや情報を搬送できるからです。そして、真直ぐにしか走らない光をどこへでも誘導することができるように開発したからです。
いままでの電気と電線は、非常にロスや障害が多かったのです。電気は近くに別の電流回路や磁気があると、それに影響されて乱れを生じます。電気の通り道の電線は、金属(主に銅線)でできていて、金属の原子とのエネルギーリレーによって電気を通すために、エネルギーの消耗が多くなります。このために、一定の距離毎にトランスを設置して
末端まで規定の電力を送ることになります。
光ファイバーの特徴の一つは絶縁体(電気を全く通さない)であることです。したがって、近くに別の電流回路や磁気があっても、それに影響されてノイズ(乱れ)を生じることがないのです。
次に、光ファイバーすなわち光が通るガラスは、幸いにも屈折率が高く、不純物のない非常に透明度の高いものが開発されました。それが石英ガラスです。透明度が十分に高ければ、光の吸収によるロスはゼロに近付けられます。
石英でできた細いガラスの線の光ファイバーは、芯の部分と芯を包む部分の2つの部分からできています。信号を送るためのレーザーを通す中心の芯の部分(コア)は、屈折率の高いガラスでできていて、周りの部分(クラッド)は屈折率の低いガラスからできています。
(*実際には、コアの部分は酸化ゲルマニュウムなどを添加して屈折率を上げ、クラッドの部分はフッ素や酸化ボロンなどを添加して屈折率を下げているようです)
屈折率の異なるガラスの組み合わせ方は、非常に重要なもので、逆の組み合わせにすると、信号を伝えるための光が漏れてロスが大きく、遠いところまで届かなくなります。
屈折率の異なる2つのガラスが密着する時、光のロスがない組み合わせ方は、光のもつ全反射の働きをより有効に活用したものです。この組み合わせの原理はシャボン玉のキラキラした光り方のなぞときから見つけられました。
この原理を利用して、逆の効果を目的としたものに、レンズのスーパーマルチコーティング(SMC)があります。レンズのSMC処理では、レンズに入る光をできる限り反射させない(吸収しやすい)組み合わせが工夫されています。その工夫とは、光が屈折率の低い方から高い方に進むように処理するものです。
(*SMCについては、後日別項を設けて掲載する予定です)
☆シャボン玉 ・・・ 光 → 空気 → 水 → 空気 (1.0 → 1.33 → 1.0)
☆SMC ・・・・・・・ 光 → 空気 → MgF2 →ガラス(1.0 → 1.38 → 1.51)
光通信では、光ファイバーの中を光はジグザグに走ります。つまり、屈折率の差で作られた境界面の壁で反射しながら進んでいくのです。この反射する時に、完全に全反射(100%)するならば、いくら遠いところまで光を誘導しても、漏れや吸収による光のロス(光の強さが弱くなったり量が減少したりする)はまったくなくて済むのです。

光ファイバーの中を通る光

光ファイバーの構造
光通信では、大平洋を横断するというような非常に遠距離が基準になります。したがって、光の全反射をより完全にすることが大変重要になってきます。
光の全反射は、光が屈折率の高い方から低い方に斜に走り、屈折率差の境界に当たった時に起こります。そして、屈折率が高い程全反射が起こりやすいことは、通信に使われる前に、胃カメラなどの内視鏡(日本のオリンパス光学が開発)の開発段階で分かっていました。
通信には電話などの有線と電波を使った無線があります。有線は無線に比べて、気象条件や磁気嵐などの影響を受けないので安定していますが、遠距離には地形や費用などの点で不利な方法でした。
遠距離には有利な電波を使う通信や放送の分野では、ラジオやテレビなどのチャンネルがどんどん増えて、以前から世界的に飽和状態になることが予想されていました。
チャンネル数を増やすためには、周波数の大きい(波長の短い)電波を活用するのですが、波長との兼ね合いにおいて、既に、装置製作の機械的な限界にまで開発が行き着いてしまっていたのです。
しかしながら、経済および文化の発展と共に、チャンネルや回線の増加の要求は増える一方です。そこで、さらに桁が違う大きな周波数の電波の活用方法が模索研究され、それまでとは違う方式になる、マイクロ波の「メーザー」の開発に始まり、一層周波数の大きい(高い)赤外線の「レーザー」の開発に到達したのです。
(*通信分野では、可視光とレーザーの近赤外線までを光と言います。レーザーについては別項「8.レーザーのはなし」をご参照下さい)
近赤外線レーザーの開発に続いて光を通す光路の研究が急ピッチで行われました。
その結果、近赤外線レーザーは石英ガラスと非常に相性がよく、純度の高い石英がラスではほとんどロスのないことが分かりました。そして近赤外線と石英ガラスを組み合わせた、軽くて、安全で、乱れのない、桁外れに大容量の信号搬送ができる、理想的な有線通信基盤が確立したのです。その後間もなく、世界中で光ケーブルが海底に敷設され、大陸間の夢の有線通信網(国際電話回線網)が完成したのです。そして地上でも、着々と布設されています。
このようにして世界に張り巡らされた光通信ケーブル網によって、今では、電子メールが瞬時に地球の裏側に届いたり、インターネットでアメリカや世界のホームページ(HP)が瞬時に見られるようになっているのです。
いずれ各家庭でも光ファイバーが電話線や同軸ケーブルに替わるでしょうが、その時の光ファイバーは少し細い2本1対のケーブルになっているでしょう。1本は受信用でもう1本は送信用になっています。各家庭が光ケーブルでインターネットに繋がりますと、さらに桁違いの大容量の情報(音声入りのアニメや質の良い自然の動きをするテレビ電話など)を送ったり受けたりすることができるようになるでしょう。
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